8世紀頃に唐を代表する詩人の韓愈が「秋の夜は涼しくて過ごしやすく、明かりを灯して読書をするのに適している」と詩を読み、それを夏目漱石が小説『三四郎』で引用したことが日本に秋の夜長に読書をする風習が広まったきっかけと言われています。名作と呼ばれる本は、基本的に50年以上の長きにわたり、無数の人の目にさらされ、良作として残った作品を指します。そこで皆さんにおススメしたいのは、子どもや若い時分に読んだ本を思い出すままに手に取り、読んでみること。すると「こんな作品だったのか」と驚かれることが多いと思います。そして、いま自分がその本から何を感じたのか、しみじみと心の動きを探索してみます。そこで感じ取ったものが意味するものとは、昔読んだ時から今に至るまでの年月の「成長」を教えてくれると言います。さらに、以前とは異なる刺激をもたらしてくれるはずです。名作とは常にどんな時も新しい世界へ導いてくれるものなのです。私は本を読むのが大好きなのですが、本の傍らにはいつも美味しいお茶があります。そのお茶を飲みながら一人で本をゆっくりと読む醍醐味は、幼い時から今まで続いています。本来の自分に還ること、それを助けてくれるのは、名作と傍らにある一杯のお茶ではないでしょうか。
読書の秋
聖心会シスター
鈴木 秀子先生
東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。フランス、イタリアに留学し、ハワイ大学、スタンフォード大学で教鞭をとる。聖心女子大学教授を経て、国際コミュニオン学会名誉会長。著書に『9つの性格エニアグラムで見つかる「本当の自分」と最良の人間関係』など多数。