私には智ちゃんというお友達がいました。「この子は宝物です」、ダウン症の智ちゃんが生まれたとき医師はご両親にそう告げました。余命1年と言われながらも40数年の生涯を全うした少女は、人を癒す無限大の力を授かっていたのです。
知能指数が46で、体つきも6、7歳の子どもに見えます。持って生まれた障がいゆえに、人間として不自由なことばかりの智ちゃんです。他の人の配慮を受けるだけの存在に見えがちです。しかし、智ちゃんは、心の中の空虚さを満たすための気晴らし、執着や野心とは無縁です。ただ生きているだけで、命あることの素晴らしさを無心に伝えてくれました。
周囲の人たちは、智ちゃんと一緒にいるだけで、人間として最も大切な価値に気付かされたのです。人間は一人ひとり尊い存在であり、神様はご自分の愛の溢れとして、一人ひとりを創造され、完全に愛し抜いていらっしゃいます。そして、生まれてきた子どもたちは、神様の愛に包まれながら、それぞれのミッションを果たしていくのです。奇跡というと私たちは偉大なことをすることと考えがちです。智ちゃんはそういう行為を何ひとつしませんが、智ちゃんに触れる人たちは、自然に癒されていったのです。